ウォッシュド精製って何？｜大量の水でコーヒー豆を作る工程
ウォッシュド精製についてはこちらで詳しく紹介しています。
今回は、「神の山から生まれるコーヒー」と呼ばれるケニア産のコーヒーについて紹介します。
コーヒーショップに行くと必ずと言っていい程並んでいるケニア産のコーヒー豆はどのような味わいがあるのでしょうか？
その魅力を知っていただくために、ケニアのコーヒーについて、その風味の秘密から生産過程、さらには歴史や社会への影響まで詳しくご紹介します。
ケニアコーヒーは、その独特な風味でコーヒー好きの人々の心をつかんでいます。
赤道直下、火山土壌の肥沃な土地で育ったコーヒー豆が生み出すその味は、一度飲んだら忘れられない特別なものです。では、何がケニアのコーヒーの味を形作っているのでしょうか。それぞれの特徴的な要素を詳しく見ていきましょう。
爽やかな酸味：フルーツのような鮮烈さ
まず一つ目に挙げられるのが、ケニアコーヒー特有の「爽やかな酸味」です。
一般的にコーヒーには酸味がありますが、ケニアコーヒーのそれは他のどのコーヒーとも違います。その酸味は、フレッシュなフルーツを思わせるような、清々しい味わいをもたらします。
特にブラックカラント、ベリー類、シトラスといった風味を感じ取ることができます。また、「ワインのような酸味」とも形容され、その爽やかさは口いっぱいに広がります。
ほどよい甘さと深み：成熟した豆の恵み
二つ目の特徴として、「ほどよい甘さと深み」が挙げられます。
これはコーヒー豆が十分に成熟し、その甘みと風味が豆全体に行き渡ることで生まれます。豆がしっかりと熟成することで、風味が複雑になり、一杯のコーヒーに深みをもたらします。
コクのあるボディ感：口いっぱいに広がる豊かさ
最後に、ケニアコーヒーはその「コクのあるボディ感」にも定評があります。「ボディ感」とは、口の中にコーヒーが残す感触のことを指し、これが重厚であるほど、コーヒーは豊かな味わいをもつとされています。
ケニアコーヒーはそのボディ感の良さから、一杯飲んだ後でもその風味を楽しむことができます。
【注目】ケニアの人気のコーヒー豆
世界中で評価されるケニアのコーヒー豆ですが、その中でも特に注目されている豆がいくつか存在します。ここではケニアの人気コーヒー豆とその魅力について探っていきましょう。
SL28とSL34：ケニアコーヒーの代名詞
最初にご紹介するのは「SL28」と「SL34」です。この2種類はケニアを代表するコーヒー豆とも言える存在で、その名前はケニアの農業研究所で開発された品種を意味します。それぞれが持つ特性がケニアコーヒーの風味を形作っています。
「SL28」はフルーツのような明るい酸味と、複雑な風味が特徴的で、一方の「SL34」は濃厚なボディと甘みをもつとされています。この2種類の豆が混ざり合って、ケニア特有の風味豊かなコーヒーが生まれるのです。
ルイリ & バティアン：新たな風味を追求
SL28やSL34以外にも、ケニアでは新しいコーヒー豆の品種が試みられています。その中でも特に注目すべきは「ルイリ」と「バティアン」です。ルイリとバティアンは、病害に強く、さらに美味しいコーヒーを生み出すために開発された新品種です。それぞれが持つ個性がケニアコーヒーの風味を一層豊かにしています。
ルイリは果実のような爽やかな酸味と柔らかな甘さが特徴で、バティアンはそのコク深さとまろやかさで知られています。これらの豆が混じり合うことで、ケニアコーヒーの風味は一層豊かなものになるのです。
ケニアのコーヒー生産について
ケニアの美味しいコーヒーがどのようにして生まれるのか、その裏側にあるコーヒー生産のプロセスについて深掘りしてみましょう。
高地での栽培：神の山から生まれるコーヒー
ケニアのコーヒーの主要な栽培地は、ケニア山の周辺です。現地では神の山と呼ばれています。
栽培地は標高が1,500m～2,000mと高く、日照量や雨量も安定しています。この高地での栽培は、コーヒー豆の成長速度をゆっくりとすることに繋がり、その結果、豆はより多くの栄養を蓄積し、深みのある味わいを生み出すことが可能になります。
また、昼夜の温度差も大きいため、これが豆の成熟を助け、鮮やかな風味と香りを引き立てます。
神の山から生まれたコーヒー、とても美味しそうに感じますよね。
ウォッシュドプロセス：洗練された風味
収穫されたコーヒーチェリーは「ウォッシュドプロセス」（水洗い法）と呼ばれる方法で処理されます。ウォッシュドプロセスでは、果肉を取り除いた後、豆を清潔な水で洗浄します。その後、豆は自然乾燥されます。このプロセスにより、コーヒー豆は洗練された風味と鮮やかな酸味を発揮します。
特に、ケニアのコーヒーはこのウォッシュドプロセスにより、その特有のクリアでフルーティーな風味を生み出すのです。
ソーキング：深い風味の秘密
ケニアのコーヒー生産者たちはさらに深い風味を引き出すために、「ソーキング」という方法を使います。ウォッシュドプロセスの後、豆は再度きれいな水に浸けられ、12から72時間「ソーキング」（浸漬）されます。
この工程で、余計な残留物が取り除かれ、豆が柔らかくなるため、浅めの焙煎にも対応できるようになります。また、コーヒー豆の含水量（水分の量）を均一にでき、味わいがソフトになります。
しかし、水に漬ける分、豆が脆くなり、焙煎が難しいという問題もあるようです。
ソーキングを行う理由
スペシャルティコーヒーの評価（カッピングテスト）では、コーヒー豆を浅煎りにしてテストします。
しかし、ケニアのような高地産の硬めのコーヒー豆は、浅煎りでは本領を発揮できません。これでは、スペシャルティコーヒー競争に負けてしまいます。（つまり、高く売ることが出来ません）
この問題を解決するために開発された独特な技術がソーキングです。ソーキングを行うことで、豆を柔らかくし浅めの焙煎でも美味しく高得点が取れるようになりました。
アフリカンベッド：時間をかけた乾燥
乾燥の際、従来の方法では、レンガやコンクリートの上にコーヒー豆を広げていました。
しかし、この方法では異物混入や土壌からの細菌汚染のリスクがあります。また、乾燥のムラがあると発酵の恐れがありました。
この問題を解決するため、アフリカンベッドと呼ばれる通気性の良いベッドの上にコーヒー豆を広げています。アフリカンベッドは、比較的手間がかかるため、高価で取引される豆に対して使用されています。
公正なオークション：生産者へのフェアな評価
ケニアでは、コーヒー豆の販売はナイロビのコーヒー取引所で開催される公開オークションで行われます。このオークションは透明性があり、また、生産者に対して公正な価格を保証するシステムとなっています。各農家やコーヒー協同組合は、自分たちが育て上げた豆の価値を最大限に引き出すことができます。
ケニアのコーヒーの歴史
1900年代初頭：スタートライン
本格的なコーヒーの生産が始まるのは、20世紀に入ってからのこと。1901年にイギリス人宣教師が、現在のナイロビ周辺にコーヒーの種を持ち込んだことがきっかけとされています。彼らは地元の人々にコーヒーの栽培方法を教え、ケニアでのコーヒー生産の基盤を築きました。
コーヒー生産の拡大と制限
しかし、イギリスの植民地となっていたこの時期、アフリカの土地でコーヒーを生産することが制限されていました。そのため、コーヒー生産は主に欧州人によって行われ、ケニア人自身がコーヒー農園を経営することはほとんどありませんでした。
その一方で、その高品質な豆は、早くから海外で注目され、特にヨーロッパ市場で高い評価を受けていました。
世界初のコーヒー研究機関「スコット農業研究所」
ケニアの歴史の中で特筆すべきは、ケニアのコーヒーの品質向上と生産拡大に対するスコット農業研究所（Scott Laboratories）の活躍です。
1930年代に設立された世界初のコーヒー研究所は、コーヒーの品種改良に尽力し、ケニアのコーヒー産業の発展に対して大きな影響を与えました。ここで生まれた品種の一つが、今日でも人気のSL28やSL34です。
その心地よい酸味とコクによって、世界的に認められ、ケニアコーヒーの名声は一気に高まりました。特にヨーロッパでは最高級豆として高い評価を受けています。
独立後の発展
ケニアが1963年に独立を達成した後、コーヒーの生産は一変。ケニア政府はコーヒー生産を国の重要な収入源と位置付け、ケニア人自身がコーヒー農園を持てるように法改正を行いました。その結果、小規模農家の数が増え、コーヒーの生産量も増大。
また、その豊かな風味と独特の甘みが評価され、特にスペシャリティコーヒーとして世界中の愛好家から支持を受けるようになりました。
現在へ
今日、ケニアのコーヒーはその鮮やかな酸味とフルーティーな風味で広く認識されています。小規模農家から大農園まで、生産者たちは新しい品種の開発や生産技術の改良に取り組み、その品質を一層高めています。
そしてその努力は、ケニアコーヒーが常に世界のコーヒー競技会で高評価を得る一因となっています。
ケニアのコーヒーのグレード
スクリーンサイズで評価
ケニアでは、豆のサイズ（スクリーンサイズ）でグレードを付けます。
| グレード | スクリーンサイズ |
|---|---|
|
AA |
17以上 |
|
AB |
15～16 |
|
C |
11～14 |
|
TT |
Cより小さい豆 |
|
T |
小さすぎる豆やかけら |
|
E |
エレファント（大きすぎる豆）
|
|
PB |
ピーベリー（丸豆） |
ピーベリーとは？
ケニアには、PBと呼ばれるグレードが存在します。これは、丸豆と呼ばれる希少な豆をより集めたものです。
味わいは変わりませんが、焙煎によるムラが起きにくいため、根強いファンが多いです。
ケニアのコーヒーに関する
よくある質問
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なぜケニアのコーヒーはフルーツのような風味があるの？
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これは、豆が育つ高地環境と肥沃な火山土壌、そして独特な加工方法によるものです。豆は洗浄され、水で浸けて発酵させることで、豆本来の甘さとフルーツのような風味が引き立ちます。
赤く熟したベリー類やシトラス系の果実のような特徴的な風味があります。
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ケニアのコーヒー豆はどのように格付けされる？
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ケニアのコーヒー豆は、その大きさによって分類されます。
大きさは「AA」から「C」までのレベルがあり、「AA」は最も大きく高品質な豆を指します。
また、規格外の豆を表す「TT」や「E」、「PB」が存在します
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ケニアコーヒーはどのように淹れると美味しくなる？
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フルーツのような風味を活かすために、抽出に時間をかけると良いです。
フレンチプレスやドリップ、あるいはエアロプレスなどを使ってゆっくりと抽出すると、豆の風味が十分に出てきます。また、淹れる際の水温は82～83℃が適しています。
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フェアトレードはケニアのコーヒー生産にどのように影響している？
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フェアトレードは、生産者が適正な対価を受け取ることを保証する国際的な制度です。
これにより、ケニアのコーヒー農家は安定した収入を得られ、生活の向上や生産設備の改善に投資することが可能になります。その結果、品質の高いコーヒーを持続的に生産することが可能になります。